2012/07/13

[翻訳] ギャツビーに関するリアクションをもうひとつ。

http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/4383/1088779869/63
よくわからないけど、名高い2チャンネルではなさそうな、どこかの掲示板。

He did not know that it was already behind him, somewhere back in that vast obscurity beyond the city, where the dark fields of the republic rolled on under the night.

http://www005.upp.so-net.ne.jp/kareha/trans/gatsby.htm あの街の向こう、あの広大で曖昧とした世界、共和主義の原野が夜にまかせて押し寄せようとしていたところにぼくらが置いてきた夢。

ぼくらが置いてきた夢。is not correct. Gatsby's dream was already behind him.

Here "the republic" just means "this nation" (the USA).

そのとおり、としか言いようがない。ゴメンナサイ。

一応その狙ったところを記録に残しておくと、the republic を「国」よりも「思想」として読みたかったんだ。「みんなで幸せになりましょうね」的な共和主義思想と読めば、「じゃあどうしてそもそもの起こりが共和主義であるはずの国でギャツビーは幸せになれないわけよ?」というニック=フィッツジェラルドの怒りみたいなものが、この文章から感じられないだろうか。

そこで「共和主義」としたわけだけど、こうするとこの the republic がアメリカであることは確実に伝わらなくなってしまう。そこで、最初の文章を作り変えて「ぼくらが……」という形に。「ぼく」はニックなので、「ぼくが置いてきた」場所はアメリカになるはずだ。

まあ、翻訳としては邪道のきわみである。

そして、つまり、オレはこのシーンを「共和国」が「夜」=「夜明け前」にあったころの歴史の話をしていると思っているのだけど、でも一般に手に入る訳書を見る限り、こんな解釈をする人はいないみたいだね……。

なんにせよ、夢がビハインドにあるのは、ギャツビーが主体的にそうしたからではないので、動作を伴う動詞を入れるのはまずそうだ。vast obscurity に「茫漠たる」を使うのは野崎孝訳に遠慮して避けていたのだけど、どうやら村上春樹訳もそうしているらしいので、もう遠慮することはなかろう。

かれは、それがとうに過去のものになったことを知らなかった。それがあるべきところは、あの都市のかなたの茫漠たる世界のどこか後方、この共和国の、夜の帳の下にうねり広がる、闇深き原野だったのだ。

……ピンボケぎみだろうか。「この共和国の、」で一回切れるのも係りがわかりづらい。「共和国」を主格にしてみる?

かれは、それがとうに過去のものになったことを知らなかった。それがあるべきところは、あの都市のかなたの茫漠たる世界のどこか後方、この共和国が、夜の帳の下にうねり広がっていた、闇深き原野だったのだ。

直前のエントリーで「読み手としての解釈を翻訳に載せるのはいかが」みたいなことを書いておいてあれだけど、ここについてはもういいやという気がしてきた。もっと大胆に過去の話にしてやれ。

かれは、それがとうに過去のものになったことを知らなかった。それがあるべきところは、あの都市が茫漠として形もなかったいつかのどこか、この共和国がいまだ夜の帳の下にうねり広がっていたころの闇深き原野だったのだ。

誤訳……というか、誤読という汚名はあえて甘受することにしよう。

でも、歴史レベルの過去のことを語って(ニューヨークの最初の植民者はオランダ人だ)、直近のギャツビーにことを考えて、歴史と直近の出来事を絡め合わせるという思考の流れには、無理がないと思うんだ。

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