2012/09/21

『ゼンダ城の虜』第11章公開。

『ゼンダ城の虜』第11章を公開しました。これでやっと残り半分。

11章は、ざっくり言うと、フラビアといちゃついて、ストラケンツ元帥と暑苦しい対談をして、フラビアといちゃつくという感じの流れ。フラビア姫がとってもうっとおしい章ですが、ここさえ乗り切ればしばらく出てこないのでがんばって付き合ってあげました。後半とかもう甘い台詞ばっかりで歯が浮くどころか虫歯になりそう。

一方、第5章以来の登場になるストラケンツ元帥との会話はけっこう好きなシーンの一つ。気障な台詞回しの多いこの小説の中でも、ここはかっこいい台詞が多いんじゃないかと思います。ベタですが「そいつを私の墓碑銘にしてもらおう」とか。なるべくかっこよく響くように、プラス、元帥が本物・偽者の件をこの時点で悟ったかどうか判断がつきかねるような訳を心がけてみました。先行訳とはちょっとちがう雰囲気になったかと思います。

あ、それからここまで「サプト」大佐にしてきましたが、「ザプト」大佐に変更します。音写の正確さというやつにはあんまり興味がないんですが、濁音が入ったほうが強そう!なので。

次章はついに、『ゼンダ城の虜』の影の主人公、ルパート・ヘンツァウが登場します。いやあ、これが楽しみで翻訳してたんだけど、ようやくですよ。まあ、12章は顔見せという感じで、本格的に登場するのはその次の13章なんですけれども。

ところで、本文とは関係がありませんが、ナビゲーションのつくりを変えました。そして11章のみ、「原文を表示する」で対訳状態にできます。対訳表示にできると、後でチェックするときに楽なんだよね~。以降の章ではこの機能は継続していきたいと思います。

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2012/09/18

『悪魔の辞典』からウィキペディアへ U-Z 編。

古い友達と酒を飲みながら、「あの『悪魔の辞典』はお前の文体だよ」と言われ、そうかなあと首をひねる。まあ、かれはこれの翻訳をする前からの知り合いなので別としても、やっぱりふつうに見て「こんなものの翻訳をやっているくらいなのだからこいつは皮肉屋に違いない」と思われているんだろうか。

そんなことないのですけどね。たぶん。オレが信じるかぎりでは

本題。表題のとおり、U-Z の項目につきウィキペディアへのリンクをセットしました。まだまだリンクを入れるべきところがありますが、あせらずあわてず思い出したようにじっくりいきたいと思ってます。

あとはとくに触ったところはないのですが、逆に言うと間違いであろう部分を放置したところもあり……たとえば UBIQUITY [遍在], WALL STREET [ウォール街], ZEUS [ゼウス] は、たぶん間違っていると思います。

それから、今回、『悪魔の辞典』の全ページに対して形式あわせのための更新をかけました。各ページに、そのページにある見出し語の一覧が表示されるはずです。

じつは『悪魔の辞典』は、公開当時から、URL に #見出し語(英語)をつければ個別にリンクがはれるようになっているのですが、どこにもそんな説明がないし、当たり前ですがどなたもご利用になっていないようです。こうしておけば気づく人は気づくかな、と。

で、この変更はあっというまにできたんですが、これに伴うというか関連するというかの修正がもうたいへん。実はもともとが html 4.0 以前に作り始めたページなので、a name="" が大量にあるというレガシーモード。単純に id に変えてというわけにはいかなかったので(すでに dt id="" で互換性をとっていた)テキストエディタの置換機能を使ってつぶしたわけですが、正規表現が苦手なこともあってなかなかうまくことが運ばず。なんか変なことになっているページがあったら教えてください。

でもこれで今後更新するのは楽になったと信じたい。

でもこれ、最終的にはデータベース化したほうがいろいろ面白く使えるかも。もしするなら、こんな設計だろうか。

  • 見出し語(英語)
  • 見出し語(日本語)
  • 見出し語(ふりがな)
  • 品詞
  • 定義文(英語)
  • 定義文(日本語)

TZE-TZE FLY みたいに見出し語が複数ついてるやつをどうするかは、考えておかないとまずいことが起きそう? あと I みたいなのをどうするか、工夫がいりそう。

2012/09/15

『悪魔の辞典』 A項修正。

なんども繰り返すようだけれども、やはり『悪魔の辞典』は読めてない。この本との関係は、性格は好きなんだけど何考えてるのかよくわからない友達(恋人でもいいけど)とのお付き合いみたいになりつつある。

今回の更新はウィキペディアへのリンクをセットするのが主要な目的だったはずなのにまたテキストをいじりはじめる諦めの悪さ。でも分からないものはやっぱりわからないなあ。AIM [目的] とか。

細かいのははしょって代表的な変更点はこんな感じ。

ABDICATION [退位]

韻文を訳しなおし。「:」の意味合いをちゃんと汲み取れていないっぽいので。

ところで、角川文庫版のこのエントリ、イサベルの部分に訳注が入っていて、「スペインを統一した女王、コロンブスの後援者、1474-1504」と、イサベル1世を指定してあるのだけど、それは違うような気がする。気になったので "The Unabridged Devil's Dictionary" の注釈を調べると、こちらはイサベル2世。リンクは2世にしておきました。

ABRACADABRA [アブラカダブラ]

韻文。押韻無視でだらっと訳出しました。散文にしてしまってもビアス一流の寓話として読める出来ですし。訳もわりとちゃんと出来たんじゃないかと思います。と、恐る恐る。ちなみに Google 先生に質問すると筒井訳が出ますが、いやあ、これはうまいわ、と思いました。いいかげん『悪魔の辞典』を買うのはやめようと思っていたんだけど、まずい、欲しくなってきた。

ABSENT [不在の]

第4文節 "superseded in the consideration and affection of another" を「親切と思いやりに追い立てられた」ではなく「話題性を失った」に。誤訳を修正して誤訳になった可能性大ですしそもそもかなり強引訳です。つか、"supersede" ってこんな使い方ができるの? とか、"consideration" には "the" がつくのに "affection" に "the" がつかないのはなぜ? とか、正直よくわかってないです。

ちなみに、岩波文庫版はこの文節だけカットしてやがります。ズルイ。

韻文も訳出しておきました。押韻無視。

ABSTAINER [節制家]

韻文訳押韻無視。「節制家」という見出し語が使えていない挙句に面白みが伝わりづらいダメ訳……。

ACADEME [アカデメイア]

見出し語を「アカドューム」から「アカデメイア」に。ウィキペディアにあわせた。

ADVICE [忠告]

「最小流通貨幣」から「はした金」に。シンプル志向。

補足的に韻文を押韻無視で訳出しましたが、これまたうまくいった気がしない。

AIM [目標]

見出し語を「目的」から「目標」へ。「ターゲット」でもいいかもしれません。AIM に「まと」の意味があるのを韻文で利用されているため。

……とオレは信じるのだけど、角川文庫版では韻文の最後の一行 "The fact is -- I have fired." が「実は首になったんだもの」になっていて、う~ん、う~ん、う~ん……。そう解釈するには、"I have been fired." じゃないといけなくないかなあ?

まあ、結論としてはこのエントリに関しては散文も韻文も自信ゼロなわけだけど。

ALLEGIANCE [忠実]

韻文訳出。うまくできてるとは思わない。でも散文が存在しない項目なので韻文を無視するとさびしいので仕方なく。

ALLIGATOR [アリゲーター]

打ち消し線を使ったトリックを除去。わかりにくくなったかな。

"West" が固有名詞なので「西欧」に。でもこれがまた間違いの可能性はある。「西部」ではないと思うけど。

ちなみに最後らへんの「ノコギリアン (sawrian)」は、鰐の背中のぎざぎざを「ノコギリ (saw)」に見立ててそこから「トカゲの仲間 (saurian)」に戻すというアクロバットをしたいんだと信じてる。原文は "From the notches on his back the alligator is called a sawrian." とりあえず英語版ウィキペディアの sauria にリンクして手がかりになればと祈るけれど、でも率直に胸のうちをを打ち明けるとさ、おいビアス、つまんないダジャレで喜んでんじゃねえよ、という気分。かれとつきあっているとときどきそういう気分になる。

なお、 大勘違いの可能性はもちろんあります。

ALTAR [祭壇・供犠台]

"the small intestine" を「小さなはらわた」から「小腸」へ。個人的にはかならずしも小腸ではないと思うのですが、まあ字義通りということで。

韻文を訳出。解釈まじりの訳なので、読み方を勘違いしていればいきおい誤訳となるわけですが、さあどうだ。

ARENA [闘技場]

"rat-pit" ということばがいまいちよくわかっていなかったのだけど、ウィキペディア(英語版)で調べるとなんと画像つきで解説 Rat-baiting が。「鼠穴」から「ラットピット」に変更しました。リンク先は英語版のウィキペディアだけど、絵でなんとなくわかると思う。

これもまた繰り返しの繰言だけど、これの翻訳をしていたころにウィキペディアがあったらどれだけマシな状態にできていたことか。

あとは、record を「記録」とする場合は不可算名詞らしいので、「過去」に変えてみました。ちょっと無理がある? まあ、どちらにしても言いたいことは変わらないけれど。

ASS [ロバ(愚鈍の象徴)]

ウィキペディアさまさま。リンクのない固有名詞は、ビアスの捏造と思ってもらって大丈夫なはず……と言いたいけれど、そこの見切りがむずかしいのがまたビアス。Capasia なんかは何かありそうな気がするけれど……。

「『七人の眠れる人』」になっていたのは初歩の誤訳なのでこそっと直す。

AVERNUS [アヴェルヌス湖]

日本語になっている感じがしなかったので訳しなおし。

2012/09/09

[ER] アクセス解析を眺めながら

青空文庫ではテキスト版へのアクセスがhtml版へのアクセスをはるかに凌駕するという妙な事態が生じているらしい。原因は不明とのことで。

もちろん、人間がふつうのウェブブラウザを使っていきなりテキスト版に大量アクセスしはじめるわけはないので、どっかのアプリケーションなりサービスなり経由のアクセスなんだろうけど、それにしても桁が多すぎ。

機械的なスパムまがいのアクセスかというと、たぶんそうじゃない感じ。1位は夏目漱石『こころ』31,158件に対し、100位の芥川竜之介『芋粥』は1,968件なので、まんべんなく無差別にアクセスしてきたわけではなさそう。

あてずっぽうに近いものがあるけれど、i読書という iPhone 用のアプリが8/15から無料で公開されているのが要因じゃないかと思う。仕様を見るかぎりでは、テキスト版にアクセスしてこざるをえなさそうだし。しかも主要なインデックスはアクセスランキングっぽいので、上位にあるものほどアクセスが増えるだろうし。

自分ちで同じことがおきてるかどうかというと、残念ながらテキスト版へのアクセスは把握していないのでわかりません。上の理屈で行くと、たぶん影響はないだろうと思うけれど。

アクセス解析といえば、実は去年の7月くらいにこっそり Google Analytics で解析するのに必要なコードを主要なページに埋め込んでいて、ざっと一年分くらいのデータがたまってます。アクセス解析はそれまでやっていなかったのだけど、数字として見せられると、本人のいい加減な予測がぜんぜん丸外れの傾向が浮き彫りに。

まずびっくりしたのは、月間1万ページビュー/4000ユーザー前後のアクセスがあったこと。正直、もっとずっと少ないと思ってた。リアル雑誌に掲載された「酒とUOの日々」でも3ヶ月で16,000ヒットくらいだったはずだし、それを考えると、まったく手入れされていないのにこれだけのアクセスが出るというのだから、オンラインゲーム速報というすぐ廃れる情報の発信をやめて今の形に移行した狙いは、ある程度正解だったと言えなくもない。

で、このアクセスがどこから生じているかというのも、まったく予想外というか。ほとんど青空文庫かプロジェクト杉田玄白だろうと思っていたら、7割近くが検索エンジンから直接アクセスしてお見えなのですね。で、青空文庫から 500 ページビューくらい。プロジェクト杉田玄白で 100 ページビューくらい。ここで面白いのは、青空文庫からのアクセスはほぼ1人1ページですが、玄白からのアクセスは複数のページにアクセスする傾向が強いこと。インターフェースのつくりの差だと思われます。

そしてアクセスしてくるコンテンツのランキングがまたびっくり。1位はだいたい毎月『黒の剣のほとんどすべて』がゲットしてしまう。1990年代のゲームですよ? 最近 PlayStation のレトロゲームアーカイブ的なところで買えるみたいだけど、それにしても毎月 1,000 とか 2,000 とかアクセスがあるのは不思議な感じ。

『黒の剣』の次がほぼほぼオー・ヘンリー『二十年後』というのも、少なくとも自分としては予想外。やはりネット上では短い話のほうが好まれるということかもしれません。その次にくるのがビアス『悪魔の辞典』、フィッツジラルド『グレイト・ギャツビー』あたり。この3強、順番はときどき入れ替わりますが、それぞれ800-1,200くらいのアクセスが出ます(html版)。

先月にかぎった話をすれば、オー・ヘンリー『警官と賛美歌』にアクセスが集中し 1,500 とだいたいいつもの5倍くらいのアクセスを稼ぎ、『黒の剣』を抑えて堂々の一位。どうやら学生さんたちの仕業のようで。おなじような経緯か『心と手』も 1,000 弱といつもより多め。じゃあオー・ヘンリー全部かというと、そうでもないのがまた需要の読みづらさというか。

そしてここのところ気になっているのが、モバイル率の上昇ペース。データをとりはじめた去年8月はモバイル端末でのアクセスは23%くらいなんだけど、先月は35%くらいにまで増えている。世の中はどうやらかなりのペースでスマートフォン化が進んでいるらしい。どうも携帯電話というものに興味がわかない身としてはそこに数万円/1回+数千円/月を投入するのはどうも腰が引けるというか……。さすがに、いまだにカメラすらついていない携帯を使っているのはどうかとは思い始めたのだけど、でもたぶんまだまだ様子見を続けそう。

ところで、パブーでやってる例の暴挙ですが、7月末に1件売りがあがっておおいにあわてふためいて以降、売れておりません。いまのところ、あっちの閲覧数は7月下旬からの累計で400くらい。売りがあがったのは本当にうれしくてなんというかかえって申し訳ない気分になりぎみなのだけど、パブーは「印税」が3000円に達しないと引き出せないので、あと1,300円売り上げないと埋蔵金状態。まあ、自分で1,300円の売りを立ててやれば、差額1,700円を引き出せるし、飽きて忘れてしまう前にそうしたほうがよいのだけど、この払い出し金額に達していない額のパブー全体での総計って、それなりに大きいんじゃという気もしなくはない。

2012/09/06

[ER] 旧がらくた玩具とゲームレビューというもののありようについての自戒

旧サイトで「がらくた玩具」というコーナー名のもとに掲載していたゲームレビューをこのブログに移動していくことにしました。

1998年 - 2000年のコンテンツで、しかもその当時ですら新作を扱っていなかったのでネタとしてはほこりまみれ。なつかしさ満載です。そのまま Not Found の墓場に埋葬してしまおうかと思ったんですが、見に来られる方が月200-300人ほどいらっしゃるようなので、コンテンツ自体は保存しておくことにします。新サイトではなくブログを移動先に選んだのは、新サイトの容量の節約のため。基本容量 20MB までなんですが、『グリーン・ゲイブルズのアン』に1MB以上とられてしまってちょっと不安になったのです……。

ブログ側だと容量は比較的余裕があるんですが、すべてを移動するかどうかはまだ悩んでいて……。『魔女たちの眠り』とか『ディアブロ』とか、あきらかに出来の悪いものはいいかなあと思ったりもするんですけどね。とりあえず、今回再録したのは以下の14件:

アクセス数が多いと思われるもの、資料的な存在意義があると思われるものからピックアップしました。アクセスカウントは実はしていませんので、検索クエリやリファから判断するところですけれど。検索にかかりやすいのは、PC9801時代のゲームのようです。競合する情報がかなり少ないからでしょうね。

『マザー2』について

この中で『マザー2』についてはとくに一言。このレビューについては諸方面から大きな批判をいただきました。もちろん、書いた当初からそういう反応があることはある程度予想していたんですが、2ちゃんねるまで飛び火して掲示板が荒れるとは思わなかったので、まあ、そのあたりいい思い出と教訓でした。

そういうわけで再録を見送ろうかとも思ったんですが、今読み直しても、書いた内容自体は間違っていない思いましたので、あえて選んでいます。

ただ「書いた内容自体は間違っていない」のですが、やはりレビュアーとしての姿勢に間違いがあると言われれば否定のできないところで。うん。フェアじゃないんですよね、このレビュー。『マザー1』はとても好きなゲームだったので、その続編に期待するところがあまりにも大きかった。だから、嫌いな要素が複数入り込んできたときに、軽く流すことができず、そしてラストの「いのる」を目にして、すさまじくがっかりしたわけで。

前作はあんなにすばらしい物語だったのに、と。

だから、オレがすべきことは、初代『マザー』のレビューであって、わざわざ『マザー2』を選んでレビューすべきではなかった。駄目なものに駄目というだけではなんにもならない。そもそもゲームレビューは、楽しさを伝えるべきものじゃないか。という初歩の初歩がわかっていなかった。

面白さを人に伝えるというのはとてもむずかしく、ついつい面白くなさを人に伝えるという、自己満足度の高い行為に走りたくなることが多々あります。やりたくない企画のあら捜し、とかね。でもそんなものを時間をかけて書き上げたって建設的でない。

その反省をこめて、再録することにしました。繰り返しますが、内容的には間違っていると思いませんので、『マザー2』のプレイをオススメはしません。ただ、ぜひ初代『マザー』はプレイしてみて欲しい(機会があれば……)と思います。

今後……?

このコーナーの最終ポストは2002年9月『ファイナルファンタジー10』のレビューでした。その後、レビューできるくらいプレイしたゲームがどれくらいあるだろうかと振り返りますと、どうもあんまり多くない:

  • 戦国無双 [PS2]
  • 真・三国無双4 [PS2]
  • 無双OROCHI [PS2]
  • カルドセプト [PS2]
  • ドラゴンクエスト8 [PS2]
  • ファイナルファンタジー10-2 [PS2]
  • モンスターハンター2 [PS2]
  • モンスターハンターフロンティア [PC]

……これくらいじゃないかなあ。ハードも PS2 と Wii しか持ってないし(つまり、Wii にいたっては持ってるけどやりこんだゲームがないという……)。なので、このブログにゲームレビューが再登場する可能性は低そうです。