- ベンジャミン・バトン 数奇な人生 - F・スコット・フィッツジェラルド
- 荊の城 - サラ・ウォーターズ
- 銀河ヒッチハイクガイド - ダグラス・アダムズ
- これからの「正義」の話をしよう - マイケル・サンデル
- 裁判長! ここは懲役4年でどうすか - 北尾トロ
- となりの関くん - 森繁拓真
先月読んだ本の話など。
小説では『荊の城』はまず佳作どころ。万人にはおすすめしないけれど。『銀河ヒッチハイク・ガイド』も、面白いけれど万人にはすすめられないよね。『ベンジャミン・バトン』にいたってはさらに。ちょっとチョイスが偏りすぎている感じ。10月は日本の小説も読もう。
小説以外では、『裁判長! ここは懲役4年でどうすか』はまず面白かった。『これからの「正義」の話をしよう』はテーマがちょっと重いし日本ではなかなか目にしないトピックも多いし、軽い気持ちで読むとついてけない。そのうちまた読む。
漫画はほかにもいろいろ読んだはずなんだけど印象的だったもので『となりの関くん』。3巻まで出ているようなのでじわじわそろえながら読んでいきたいと思います。
ベンジャミン・バトン 数奇な人生
生まれた瞬間から70歳、ふつうに言葉もしゃべれてしまうベンジャミンが、年を重ねるごとにどんどん若返っていくという数奇な一生をおくる様子を描く。作者フィッツジェラルドいわく「マーク・トウェインの思いつき『残念ながら人生というものは、最良の瞬間が最初の最初にやってきて、最悪の瞬間が最後の最後にやってくるものらしい』を逆転させてみようという実験的作品」。
2009年の映画版は基本シリアスに描いているけれど、原作はユーモアが強め。しょっぱなでは老人なのにベビーベッドに押し込まれたり。最後らへんでは真面目に人生を送れと息子から怒られたり。むしろ、軽い読み物として楽しめるものと思います。深読みは、したい人はどうぞっていう感じ。
翻訳は永山篤一訳(角川文庫)、都甲幸治訳(イースト・プレス)の2種類が出ているみたい。個人的な趣味で言うと都甲幸治訳の方が好みかな。「ベンジャミン・バトン」一作しか収録されていない小さな本ですが、ベンジャミンのどんどん若返っていくイラストをはじめ、本としてのつくりが素敵。ギフトにも使えそうなくらいですが内容的に不向きか。
荊の城
あるところに莫大な財産を相続することになっているお嬢様がおりました。ただしお嬢様が結婚するまではその財産は自由にできません。そこに目をつけたハンサムな紳士風の詐欺師が、スリの少女と手を組み、お嬢様を罠にはめてがっぽりもうけようぜという物語……少なくともスタート時点では。
はじめて読む作家さん+訳者さん。ディケンズをベースにしたんだろうと思われるちょっと重たいスタイルが少々苦手で途中一回投げ出しかけたものの、第一部を読み終えたあたりでがぜん面白くなってきてその後一気読み。
ま、要はみんながみんなで騙しあい的な忙しい小説なんですが、スリの少女・スーザンのかわいくなさが可愛らしくてちょっと不思議な感じ。あとお嬢様が最後に、え~と、そう、小説家として自立して、ある種の白い花を咲かせるという展開にわあ……!と思ったり。好きな人はたぶんもっと好きな展開だと思います。
あとがきにつながりキーワードがあれこれ書いてありましたが、オレの場合、「奇妙な依頼人」に登場する「マーシャルシー監獄」でピンときました。
銀河ヒッチハイク・ガイド
開始数ページで地球がこなごなになるところが主人公(地球人)とそのお友達(非地球人)だけはたまたま通りがかった宇宙船にヒッチハイクで乗り込んで難をのがれたのはいいけれどその宇宙船の主が非寛容な宇宙人で宇宙空間に放り捨てられたら別の宇宙船にぐうぜん拾い上げられて……っていう流れの、荒唐無稽いきあたりばったり物語。
まだ読んでなかったの?と言われそうですが、ええ。「面白から!」と言われて読んだ本はたいがいピンとこないことが多いのですけれど、これはそうでもなく、純粋に面白かった。出だしの数段落にすばらしいユーモアのセンスが凝縮されてます。
ノリとイキオイで話が進んでいくので、じっくり静かに読書を楽しみたいときのセレクトには向きません。かといって、ある程度集中できる環境でないと話についていくのに一苦労しそうな感じも。ふさわしい環境のむずかしい本かもしれない。
これからの「正義」の話をしよう
お勉強ということで。「正義」を、(1) 功利主義 (2) 自由市場主義 (3) 美徳の奨励 の3つの観点から考える。バランスよくいろんな時代のいろんな人たちの視点を紹介してくれるのは二重丸。いろいろ勉強になりましたが、個人的には、南北戦争の召集命令と替え玉の逸話が『グレイト・ギャツビー』との絡みで非常に有益でした(ピンボケ)。
裁判長! ここは懲役4年でどうすか
ちょっと前(だいぶ前?)にテレビでドラマ化されたのをなんとなく見ていた。
ノンフィクション。法曹界とは無縁のライターさんがいろんな裁判を傍聴した記録。やれ正義だ社会悪だと大きく振りかぶるシリアスなものではなく、かといって、あらあら聞きました奥さん的なモスキートなものでもない、観察日記的な感じが心地よい。オレ個人的には裁判所とか行ったことがありませんので、へえ、こんな感じなんだ、と面白く読みました。
となりの関くん
「私の隣の席の関くんは授業中いつも何かして遊んでいる」
奥さんチョイス。けらけら笑いながら読みました。舞台は日本の高校。授業中にいつも遊んでいる関くんを、その隣の真面目に授業を受けたい横井さんが観察するという一話完結スタイルの物語で、話の大筋は毎回同じなんですが、いやいや、展開のさせ方が毎度上手。手札のおおいことおおいこと。
個人的には「2時間目」の将棋の話がいちばん面白かった。ルールを無視して関くんによって作られる物語(金が王を裏切って恐怖政治を……)が傑作。だいたい学園モノには自動的に減点が入る学校ギライのわたくしめですが、それでもこれは人に薦められる、という感じです。
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