天神イムズ8F三菱地所アルティアムで開催中の石田徹也展を見に奥さんとお出かけする。
誰かに石田徹也が好きだ、ということを告げるのは、多少度胸がいる。もし相手が共感してくれるなら、かえってオレはその人のことを警戒するだろう。共感してもらえなければ、警戒されるのは自分だ。そして相手が何も知らなくて、「へえ~、どんな絵を書いた人?」と問われれば、オレは確実に返答に窮する。
ストレス社会に生きる現代人の肖像、という最大公約数の評価は、なんだかとてももどかしい。オレはこの人の絵を、たぶんもっとエゴイスティックに見ている。
石田徹也の画中の男は、いつも何かから必死に逃げ惑い、あるいは、すでに捕らわれている。冷たい筆致で描かれた世界は、しかし不安に満ちている。
オレはその不安にひどく共感する。共感せずに済むくらいに心強くあれば理想的だと思いながら、でもその不安は確かに自分の中にもあることを認めざるを得ない。そして他にも共感する人々がいるという事実に、なんだかとても救われるものを感じてしまう。
芥川龍之介は「ぼんやりした不安」を自殺の動機に挙げた。「ぼんやりした不安」について芥川は『或る阿呆の一生』『或旧友へ送る手記』『遺書』など言葉を重ねて一生懸命に説明するわけだけど、でもしかし、率直に言ってよくわからない。でも、石田徹也はそれをイメージ化してのけた。
イメージを与えられた不安は誰かと共有することが可能になる。誰かと共有するために不安のイメージを固定する。それこそが、石田徹也の絵が持つ力じゃないだろうか。と言いつつ、オレは結局、石田徹也が好きだと軽やかに言ってしまう人を、きっと警戒してしまうだろうけれど……。
5/27までは再入場可能らしいので、もう1回くらい見にいけたらいいな。入場料400円というのは破格だと思いますので、天神にアクセスできる方はこの機会に、ぜひ。
【参考リンク】
■石田徹也展 / 三菱地所アルティアム(イムズ8F)
会期は5/27まで。入場料400円、前売300円。
■石田徹也公式ホームページ
■ウィキペディア / 石田徹也
若干オレが書いた部分があります。でもいつの間にか英語版の方が詳しい……。『無題2001』はその後もう一回オークションに出品されて3倍近い値段がついたんだって。
■『石田徹也全作品集』
高いけど、オススメ。そういえば、今回の展示会のおかげで、この本の言う某癒し系女性タレントがどうやら井川遥らしいことを知りました。
0 件のコメント:
コメントを投稿