4月7日付けでウィキペディア日本語版にウィリアム・バブコック・ヘイズンの記事をポストしました。とりあえずどういう人かは記事そのものを読んでもらうとして。
だいたい、あのアンブローズ・ビアスを士官に取り立てて幕僚に迎えているくらいなので、その人柄も推して知るべきというか。とにかく現状不満の騒ぎ屋でいろんな相手と喧嘩しまくった人……というのが、記事執筆前の印象だったのだけど、今回あらためて南北戦争中の戦歴を調べてみると、むしろ軍人としてはかなり優秀な人だったのではないかと思う。いきなり大佐になっているのは、まあ北軍の人手不足という事情を引き算してやる必要があるにしても、上が次々に挿げ替えられる中で一定の役割を果たし続け、最終的には少将に到達している。
南北戦争中の戦歴では評価の高いジョージ・アームストロング・カスターほどのきらびやかさはないとはいえ、実はほぼ変わらない昇進ペースであるのはちょっと面白いところ。もちろん、カスターは10才ほど下なので単純に比較していいわけはないけれど。ヘイズンのもっとも有名な功績はストーンズ・リバーの戦いで戦線を崩壊から救った防戦ぶりであるところは間違いないところだけど、それ以外でも、ブラウンズ・フェリーの戦いでは作戦全体のもっとも重要な部分がヘイズンに振られている。ブラントやシャーマンを中心に発案されているこの作戦で、かれらの幕僚ではないヘイズンがあえて起用されているあたり、けっこう同時代の評価も高かったのではないかと思う。
そのあたりもうちょっと書いてあげたいなと思うところがあるけれど、これがなんと、日本にいて簡単に手に入る資料がまるでない。だいたい、南北戦争の戦史についてまとめられた本が日本でほとんど出版されていないという事実には正直びっくりした。日本って歴史好きの国だしとくに戦争ものは大好きなはずだと思っていたのだけど、諸外国の内戦レベルのものについてはほとんど本としては出ていないようだ。ウィキペディア(日本語版も英語版も)の南北戦争に関する記事はあまり質がよくない傾向にあるのであてにならないし。
仕方がないので英語版の翻訳を種に指定出典を Google Books で拾える範囲で膨らますスタイルで書いた。日本語文献ゼロになってしまったのは残念なところだけど、もともと米国外で知名度のある人物ではないので仕方がない。ビアスの作品に添えられた訳者あとがきやら解説やらには多少出てくるのだけど、とりたてて出典とするほどのものじゃないしね。Cooper, Edward S. (2005) William Babcock Hazen: The Best Hated Man が使えればはるかに充実したものが書けるだろうけど、趣味で取り寄せるにはあまりに高価すぎる。とりあえず今回はこのくらいが限度かな。
ところで、4月9日の新着記事紹介に選出されました。こんなマイナーな人物伝をよくまあと思うけど、素直に嬉しく思う。新着記事に出るのはこれで4本めだったかな?
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